Search

韓国は「群衆心理」で罪を裁く国になってしまうのか【崔さんの眼】 - 時事通信

ジャーナリスト・崔 碩栄

 4月15日に行われた韓国の総選挙の結果、300議席中、180議席を与党が占め、文在寅政権の後半期の政権運営はより一層、盤石なものとなった。

 一方の保守野党は、103議席と惨敗、幾つものメディアから「壊滅」と表現されるほど深刻な打撃となった。

 この惨敗の中には、次期大統領候補として名前が挙がっていたほどの大物政治家たちの落選も含まれていたことから、惨敗後は強力な指導者が不在になってしまい、今、深刻な混乱に陥っている。

 ◆「倍返し」を公開宣言

 今回の選挙は、この5月で就任4年目を迎える文在寅大統領に対する「中間評価」ともいえる選挙だ。

 新型コロナウイルスへの対応を高く評価された結果とみられるが、実のところ、国防、外交、経済などについては、明るいニュースがほとんどない現政権だ。

 一部からは、やみくもな政策ばかりだと批判を受けているが、少なくとも、獲得議席数に見合うだけの国民から、支持されていることが証明された。政権に大きな自信を与える結果であったことは確かだ。

 だが、これにより、彼らはむしろ、過信してしまったのではないだろうか。選挙後、与党の一部議員には「民主主義」国家の政治家とは到底、思えないような、目に余る言動が相次いだ。

 その代表例が、文大統領の最側近ともいうべき崔康旭・前青瓦台(大統領府)公職紀綱秘書官(高位公職者を監査する職務)の発言だ。

 今回、比例代表として当選した崔氏は、当選直後のSNSで「一握りにもならないような腐敗したやつらによる汚い工作が続いている。世界が変わったことを痛感できるように仕返してやる」と「倍返し」を公開宣言した。

 ここで「腐敗したやつら」というのは「検察」を指した言葉である。

 ◆司法権を掌握した文政権

 実は崔氏は、日本でも話題となった曺国前法相のスキャンダルに関連して今年1月、検察によって起訴され、今なお被疑者の立場にいる。

 彼の嫌疑は、弁護士として勤務していた2017年に、曺前法相の息子が大学院に進学する際に提出する証明書について、虚偽の内容を記載し、大学の業務を妨害したというものだ。

 総選挙と地方選挙で圧勝し、親政権性向の裁判官たちを多数任命することで立法、行政、司法権を掌握した文政権に唯一、ブレーキを掛けることができるといわれているのが検察だ。

 特に、現検事総長の尹錫悦氏は、曺国氏と崔康旭氏を含む権力の中枢にいる人物を次々と起訴したことで、文政権だけでなく、政権支持者たちからも「公共の敵」扱いを受けている。

 この対立構造の中、当選直後の21日、公判に出席するために裁判所に向かいながら崔氏が残した言葉には背筋が凍るような思いがした。

 「市民たちにより審判は既に下された」

 この言葉は、選挙直前に文政権最大のスキャンダルであった青瓦台の地方選挙介入疑惑、曺国スキャンダルなど、大きな問題があったにもかかわらず、選挙に圧勝したのは、国民がこれらの疑惑に免罪符を与えたものであり、つまり、自身は無罪であるという宣言だ。

 ◆疑惑正当化に国民の反発なし

 単なる傲慢(ごうまん)発言とも言えるが、現政権の情勢判断を暗示する発言ともみられるのではないだろうか。

 審判は「法」により下されるものだ。国民の支持が法の代わりになるというのは、まるで紅衛兵たちの支持を根拠に、政敵と社会システムを倒した文化大革命の時の中国を連想させる。

 民意は「生き物」と同じだ。時には感情に走ることも、偏った情報を頼りに、間違った判断をすることもある。

 だからこそ、成文化された「法」が必要で、法に判断を委ねることが、民主主義の大前提となっているのではないだろうか。

 現在の韓国では、このシステムがまひしているかのようにみえる。「市民による審判」という自身の疑惑を正当化する言葉に反発する国民の声がほとんど上がってこないのだ。

 今、与党や与党支持者たちは、総選挙の圧勝に酔っているのかもしれない。

 だが、絶対に忘れてはならないことがある。それは、世界の多くの独裁者の横暴、そして戦争は、「市民の支持」の下に始まったということだ。

 (時事通信社「金融財政ビジネス」2020年5月7日号より)

  ◆【崔さんの眼】バックナンバー◆

 【筆者紹介】

 崔 碩栄(チェ・ソギョン) 1972年生まれ、韓国ソウル出身。高校時代から日本語を勉強し、大学で日本学を専攻。1999年来日し、国立大学の大学院で教育学修士号を取得。大学院修了後は劇団四季、ガンホー・オンライン・エンターテイメントなど日本の企業に勤務。その後、フリーライターとして執筆活動を続ける。著書に「韓国人が書いた 韓国が『反日国家』である本当の理由」「韓国人が書いた 韓国で行われている『反日教育』の実態」(ともに彩図社)、「『反日モンスター』はこうして作られた」(講談社+α新書)、「韓国『反日フェイク』の病理学」(小学館新書)など。

Let's block ads! (Why?)



"腐敗" - Google ニュース
May 17, 2020 at 07:00AM
https://ift.tt/2WMvoa5

韓国は「群衆心理」で罪を裁く国になってしまうのか【崔さんの眼】 - 時事通信
"腐敗" - Google ニュース
https://ift.tt/2CLdWYC
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update

Bagikan Berita Ini

0 Response to "韓国は「群衆心理」で罪を裁く国になってしまうのか【崔さんの眼】 - 時事通信"

Post a Comment

Powered by Blogger.