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政府が手がける施策が効果に結び付いていないのは明らかだ。早急な事業の点検が欠かせない。
バブル崩壊の影響で就職難に見舞われた就職氷河期世代に対する集中支援である。複数事業で利用が進まず、予算の8割以上を使い残した施策も出ている。
集中支援は、安倍晋三政権が2019年の参院選を前に打ち出した。20~22年度に氷河期世代の正規雇用者数を30万人増やす目標を掲げ、企業への助成強化や、就労相談から職場定着までの一環支援などに取り組む。
ところが、21年時点で目標の1割の3万人増にとどまる。岸田文雄現政権は、コロナ禍による雇用情勢悪化を原因に挙げ、目標達成のために24年度までの期間延長を表明している。
コロナの影響は大きいにしても、効果が小さすぎないか。当事者の生活実態や就労状況をきちんと把握し、役立つ支援になっているか検証する必要がある。
氷河期世代は、バブル崩壊後の1990年代半ばから約10年間に大学などを卒業した30代半ばから50代前半の人たちだ。企業が新卒採用を絞り込み、政府の規制緩和で派遣労働の範囲が広がったことも重なって、非正規労働で働かざるを得ない人が続出した。
十分な技能を身に付ける機会を得られず安定した職に就けなかったり、自信を失って引きこもったりする人が少なくない。親の病気や介護の問題を抱える人、ひとりで子育てをする人もいる。
一方で、非正規や無職が長い人の経験不足を懸念する企業は多い。雇い入れても、職場になじめないまま早期退職してしまう事例がある。目先の人手不足解消を急ぐ企業と求職者との間で希望職種にずれも生じている。
漫然と企業への助成を続けるだけでは不十分だ。個人の事情に合わせたきめ細かな対応ができるかが鍵になる。
力になるのは、氷河期世代の実情を知る民間の支援団体だろう。支援に積極的に関わってもらい、安定した職を求める人が安心して一歩を踏み出せる仕組みを整えたい。技能研修など行政や企業による人への投資も重要だ。
就職氷河期世代の問題は、新卒一括採用や終身雇用の慣行が残る日本社会が生んだと言える。社会保障への影響は大きい。社会全体で向き合わねばならない。
政府は、支援の重要性をもっと社会に訴え、長期にわたって取り組む姿勢を示すべきだ。
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