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2030年代の消費はどうなる? 読み解く鍵は「α世代」の行動特性に - 日本経済新聞

α世代を見ると、2030年代の消費社会が見えてくる──。若者世代に見え始めている行動特性や新たな価値観は、未来の社会を洞察するヒントとなる。現在の消費の担い手としてZ世代に注目が集まる中、2031年にはその下に育つ「α世代」が成人し始め、社会の中核となっていく。α世代に着目することは、今すぐやるべきこと。新刊『新消費をつくるα世代』著者の小々馬敦氏が「この先」を読み解く。[日経クロストレンド 2024年5月20日付の記事を転載、一部更新]

2034年は、団塊Jr.・ミレニアル・Z・α世代が共生する社会。団塊Jr.世代とZ世代の親子、ミレニアル世代とα世代の親子という2つの家族像を捉えることは、これからのマーケティングを考える上での示唆となる

2034年は、団塊Jr.・ミレニアル・Z・α世代が共生する社会。団塊Jr.世代とZ世代の親子、ミレニアル世代とα世代の親子という2つの家族像を捉えることは、これからのマーケティングを考える上での示唆となる

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なぜ今、α世代を見るのか

 2025年にミレニアル世代(1981年~96年生まれ)とZ世代(97年生まれ~2009年生まれ)の合計が、生産年齢人口の過半数に到達します。

 生産年齢人口とは、労働生産と消費の中核的な担い手となる15~64歳の人口のことで、その国の市場経済に活力を生み出す源。また、生産年齢人口は国内市場の規模を捉える指標としても重要です。生産年齢人口数とその構成が変化していく動態を捉えることは、その国の社会がこれからどのように変容していくかを洞察する助けとなります。

 筆者は2014年から、「より良い未来社会の姿を洞察し経営とマーケティングのあるべき進化を探求する」ことを研究テーマとし、その手段として、若者世代の価値観と行動の変化に注目した調査研究を行うゼミを主宰しています。

 ゼミの活動を始めた2014年当時、若者を対象とした研究は劣後に評価され、研究パートナーを見つけるのに一苦労する状況でした。なぜなら、その当時企業がマーケティングを行う対象は、貯蓄があり意欲的に購買を続けるシニア層に向かっていたからです。

 「若い人はお金を使わないでしょ。それに若者人口はこの先も減っていくので、市場規模が小さくて魅力を感じない」

 企業がこのように考える背景には、これからの時代、65歳以上の老年人口は拡大するものの、14歳以下の年少人口は大きく減少していくという「少子高齢化社会」の強いイメージがありました。デフレ経済の中で成長を続けるためには今日の売り上げが大事で、それを達成しやすいシニア層に取り組むことが優先というマインドが強くあったと感じます。

 しかし、2018年ごろから潮目が変わりました。「若者のニーズや行動の特徴を知りたい」という相談を受けて、企業の勉強会や研修に呼ばれる機会や、産学協同研究の問い合わせも一気に増えていきました。同時期にZ世代が成人し、彼ら彼女らが消費者・顧客像として具体的に見え始めたことが、若者のインサイトにスポットが当たるようになった要因だと思います。

 そしてその後、「Z世代」はマーケティング界のバズワードとなります。「Z世代に受ける商品を開発するには?」「Z世代に刺さる広告プロモーションは?」と、Z世代をターゲット市場と捉えて、そのアプローチについて紹介する記事や書籍が多く見られるようになりました。

 けれども、Z世代の理解が進むほどに、Z世代を対象としたマーケティングの難しさを感じて幻滅する声を聞くことも多くなりました。「Z世代の多様な価値観に対応すると市場規模は小さくなり、ビジネスのスケールが難しい」ことに多くの企業が悩まされていました。

 自己成長期にある若者世代が積極的に購買するカテゴリーはそれほど広くありません。そしてそのカテゴリーはおおよそ、ファッション、美容、飲食、旅行、エンタメなど、親しい仲間との交流に関わることです。交際費、交通費など“交(まじわる)”が付くカテゴリーには消費が起こるのです。

 これら以外の業種業界においては、若者を直接のターゲットとするビジネスは事業収益性が低いという判断になることを理解しています。その上で、私たちが産学連携の研究活動を始める際に企業の方にお話しすることがあります。

 それは、若者を売り上げを獲得するためのターゲットとして近視眼的に捉えるのではなく、一歩引いて、今、若者とのエンゲージメントを強くすることの意味と意義を捉えてほしいということです。

 現在α世代(10年~24年生まれ)は人格が形成されていく幼少期、Z世代は性格が決定されていく青春期にあります。この時期に企業やブランドに対して共感を覚える経験や、大切な思い出の一部だと思える感情的なつながりを形成することは、成人後のLTV(顧客生涯価値)の増大に寄与し、持続経営の命題である事業価値と企業価値の最大化を支援します。

 近い将来における若者世代のプレゼンス、経済市場への影響力について考えてみましょう。今から10年後、34年の生産年齢人口は、概算で6400万人。そのうちの4400万人はミレニアル世代・Z世代・α世代となり、これは市場経済全体の7割を占める規模です。特にミレニアル世代とZ世代が購買力を備えたボリューム層に育ち、市場経済の中核となります。

Z世代の大学生とα世代の小学生が共同で行ったプロジェクトで、Z世代が感じた自分たち世代とα世代の違い

Z世代の大学生とα世代の小学生が共同で行ったプロジェクトで、Z世代が感じた自分たち世代とα世代の違い

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(写真:jodoto/stock.adobe.com)

(写真:jodoto/stock.adobe.com)

 そしてα世代も次々に成人し、市場でのプレゼンスを強めていきます。今α世代に注目することは、全く時期尚早ではないのです。

 2034年の社会を俯瞰(ふかん)すると、4つの世代(団塊Jr.・ミレニアル・Z・α世代)が共生していることが見えてきます。また、「団塊Jr.とZ世代の親子」と「ミレニアルとα世代の親子」という、2つの家族像となることも見えてきます。

 この4世代は上の世代と比較して家族仲が良く、家族で過ごす時間が長いという特徴があります。例えば、ショッピング中にLINEで「これどうかな?」「似合ってる。いいね!」とやり取りして購入を決めるなど、お互いの購買行動に影響し合います。

 家族仲が良いという特徴をもう少し詳しく分析すると、今の親世代は子どもには好きなことをさせてあげたいという意識が強いことや、現代では子ども世代の価値観や行動が、親世代に影響を与える傾向が強いことが分かります。家族内での関係性が消費に大きく関わるため、「団塊Jr.とZ世代の親子」と「ミレニアルとα世代の親子」、2つの家族像を捉えることは、これからのマーケティングを考える上での示唆となります。

新しい消費社会へのシフトが2025年から加速する

 私たちは研究を通して、ある期待を抱くようになりました。2025年から日本社会のパラダイムシフトが加速するのではないかという期待です。

 実はその流れは既に始まっています。20年を境として、それまで最大の消費ボリューム層であり社会の価値観を導く層であった団塊世代が、生産年齢人口、いわゆる現役世代から卒業し始めています。社会・企業における意思決定リーダーの世代交代が進むことで、社会の空気が変わり、消費行動や働き方、人々の物事の捉え方や判断基準が、一気に変容していきそうです。

 SNS、AI(人工知能)、DX(デジタルトランスフォーメーション)などが進捗する社会の中で成長しているZ世代とα世代の感性と、行動規範が、2030年代の新しいスタンダードになっていくのです。

 現在、多くの企業がSDGs(持続可能な開発目標)の達成年である2030年を見据えた未来ビジョンを世に公開し、そのビジョンを意識しながら活動しています。来たる2025年からは次の10年間、ポストSDGsの時代を見据えて新たな未来ビジョンを描く社内活動が活発となることでしょう。マーケティングや社員の採用・育成などのおおよその企業活動は、新しいアプローチへのアップデートが必要となります。

 新しい時代に向かう節目となる25年を目前として、今この時は、これからの社会における自社・自身の存在意義とビジョンについて再考する、待ったなしのタイミングといえるでしょう。

若者研究は未来社会を予測する手段

 マーケティング界では未来社会を洞察する手法として、若者世代に見え始めている新しい行動を観察する手法があります。私たちも「未来の姿は若い世代の生活に見え始めている」ことを前提に置き、研究を続けています。

 研究ではまず、マクロな観点で、これから起こる人口の推移など社会経済の変化を捉えます。同時に技術の進化についても理解します。技術革新によって人々が生活する上でできることが変わり、それが社会の変容に大きく影響するからです。こうした社会経済の変化と技術革新が、メディア、流通、コミュニティー形成など、人々の生活のありようにどのように影響し得るかを考察することで、未来の姿を想像することができます。

 このプロセスで大切なポイントは、社会経済と技術革新に人々の感性(センス)が、いつ追い付けるのかを察することです。社会経済の変化と技術革新は、社会に新たな価値観をもたらします。そうした新しい価値観に人々が共感し、次第に物事の捉え方(パーセプション)が変容し、行動を始めることで、社会に新しい生活の常識(コモンセンス)が形成されます。

 この連載では、α世代に見え始めている価値観や行動特性を見ることで、彼ら彼女らが中核を担い始める2030年代の社会のありようを考察します。

 また、Z世代からα世代への価値観と行動の変化にも目を向けます。Z世代との対比を通して、α世代に芽生え始めている新たなセンス、パーセプション、コモンセンスと、それらが形成される背景を知ることで、今後のビジネスのビジョンを描く際のヒントにしていただければと願います。

 連載第2回では、α世代に見られる5つの特性について詳しく見ていきます。

新刊『新消費をつくるα世代 答えありきで考える「メタ認知力」』(日経BP)。α世代の価値観や行動特性から2030年代の消費社会を考察。また、そこからこれからの時代に求められるマーケティングのあり方や、マーケターに必要な素養について考えます。
「α世代」とは、2010年~24年頃に生まれる世代。本書はα世代の特性と、彼ら彼女らが社会の中心に躍り出る2030年の消費と社会像の在り方を考察する、国内初の本格的な書籍です。これからの時代に求められるマーケティングのあり方や、マーケターに必要な素養について考えます。

小々馬敦(著)、日経BP、1980円(税込み)

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