電気で走るレーシングカーが世界を転戦する次世代のモータースポーツ「フォーミュラE(FE)」。フォーミュラ1(F1)や世界耐久選手権(WEC)、世界ラリー選手権(WRC)と並び、今では世界自動車連盟(FIA)が承認する世界選手権シリーズに成長した。先週末、FEの第10戦が北アフリカのモロッコで開催された。
◆今季3勝のモルタラがランキングトップに復帰
全16戦で争われれる「シーズン8」は1月にサウジアラビアで開幕し、メキシコ、イタリア、モナコ、ドイツ、そしてインドネシアを転戦して既に9戦を消化。シリーズランキングでは、トップから4位までが12ポイント差という混戦模様を呈していた。
7月2日(土)に行われた第10戦では、戦略的な走りに定評のあるエドアルド・モルタラ(スイス)が今季3勝目を挙げてランキングのトップに再浮上。第7戦から、4戦連続で表彰台に立つ安定した速さを見せている。
モルタラは2009年と2010年にマカオGPを連覇◆砂漠の砂が独特の難しさ
今回の舞台となったのは、北アフリカの国モロッコ。FEでは、ほとんどのレースが一般道を一時的に閉鎖した「ストリートコース」で行われる。コンクリートの壁に囲まれ、路面コンディションが場所によって変化することもあり、ドライバーには高度なドライビングスキルが要求される。
レースが行われた内陸部の街マラケシュは、周囲の乾燥地域から風によって運ばれてくる砂やほこりが路面に積もっている。滑りやすく、スピンや接触などのリスクも高い。「アタックモード」*を使用するためにレコードラインを外れたマシンが、タイヤのグリップを失いスピンする場面もレース中には見られた。
路面は砂埃が覆うマラケシュのコース◆バッテリーの温度管理も重要
前戦のジャカルタ(インドネシア)同様、マラケシュでも温度がもう1つの鍵となった。市販の電気自動車(EV)でも、高速走行を長時間続けるとバッテリー温度が上昇しパフォーマンスが低下することがある。バッテリーに蓄えた電気でモーターを駆動するFEのマシンも、基本的なしくみは市販のEVと同様だ。激しいドライビングを続けると、出力の低下を招く。
FEのレースでは、バッテリーに蓄えた電気の効率的な使い方、いわば「電費」を考えた走りが常に結果を左右する。これに加え、モロッコではバッテリーの温度上昇をいかに抑えるかが、戦略を組み立てる上で重要な要素となった。
速さだけでなくレースの組み立てが重要◆ “インテリジェント” な走りが重要なFE
優勝したモルタラ(ベンチュリ・レーシング)はレース後のインタビューで、「タイヤの状態やエネルギー(電気残量)に加え、バッテリーの温度管理にも気を遣いながらできるだけ “インテリジェント” にレースをすることに心がけた」とコメントしている。
6番グリッドから追い上げて3位表彰台を獲得したミッチ・エバンス(ニュージーランド)も、ライバルたちと戦いながらバッテリー残量と温度の管理が大切だったと言う。
「インテリジェント」なレース運びが重要だというモルタラ「事前に立てた戦略に基づきながら、状況に応じてチームと(無線で)攻めのタイミングを相談した」ことが好結果につながったとレース後に語った。モルタラ同様に今季3勝を挙げているエバンス(ジャガーレーシング)は、ランキング4位で2位との差も4ポイントまで迫りトップも射程距離に入ってきた。
慎重に攻めのタイミングを見極めたエバンスモルタラとエバンスに割って入り2位でゴールしたのは、DSテチータのマシンを駆るアントニオ・フェリックス・ダ・コスタ(ポルトガル)。シーズン6(2019/2020)のシリーズチャンピオンは、ここまで表彰台ゼロというシーズンを過ごしてきたが、モロッコでは今季初のポールポジションと2位表彰台という好結果を残した。
ダ・コスタは今季初表彰台で勢いに乗るか?◆モータースポーツが地球環境の改善に貢献?
市販のバッテリーEVでは、充電に必要な時間と一充電あたりの走行可能距離が課題となる。長距離を走るケースでは、できるだけ充電回数が少なく短時間で済むことが望まれる。充電設備の普及や車両性能の向上は少しずつ進んでいるが、EVがエンジン搭載車に代わるためには更なる進歩が求められる。
熱によるパフォーマンスや充電性能の低下は、FEと同様に市販のEVでも課題とされている。モータースポーツは、その黎明期には「走る実験室」とも呼ばれ、市販車の技術開発に貢献した。近年、F1など高レベルのレーシングカーと市販車では性能差が大きすぎるため、市販車への技術的フィードバックはあまりないとも言われていた。
FEには、電気自動車の技術開発にも期待がかかる一方、「電費」を含むエネルギーの効率的な使い方やバッテリーの温度管理など、FEで勝敗を左右する要素は市販のEVとも共通する部分が少なくない。モータースポーツを通した技術開発が、再び市販車(EV)の性能向上につながり、「ゼロエミッション」を通した地球環境の改善に貢献することを期待したい。
次のFEは2週間後。ニューヨークの街中を22台のマシンが疾走する。7月16日に第11戦が、翌17日に第12戦がダブルヘッダーとして開催される。今後も、「電気のF1」については、独自の視点からレポートしていきたい。
* 決勝レースでは、一時的にモーター出力を220kWから250kWに上げる「アタックモード」を決められた回数使用することが義務付けられている。パワーが上がる一方で、走行ラインを外れた場所に設けられる「アタックモード・ゾーン」を通過する必要があるため、その間に後続にオーバーテイクされるリスクも多い。
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