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山形の日本酒日本一 鍵は風土の個性「テロワール」 - 産経ニュース

(上から時計回りに)山形市内の酒店には「日本一の美酒」がずらり▷山形では「お酒の神様」と呼ばれる小関敏彦さん▷盛況だった「第2回日本一美酒県山形フェア」=3日、山形市(いずれも柏崎幸三撮影)

日本酒の出来栄えを審査する全国新酒鑑評会で、特に優れていると評価された金賞酒に山形県から20銘柄が選ばれ、都道府県別で全国1位になった。山形の単独1位は19年ぶり。9連覇中だった福島県は5位に後退した。山形躍進の背景には、ワイン造りで「テロワール」と呼ばれる風土の個性を生かした酒造りの実践があった。

明治から111回目

「蔵元同士の情報交換や切磋琢磨(せっさたくま)が、山形全体の底上げにつながった」

山形県酒造組合の仲野益美会長(61)は、こう言って喜んだ。

鑑評会は、独立行政法人酒類総合研究所などが主催。日本酒の品質や製造技術の向上を目的に明治44(1911)年に始まり、今回で111回目を数える。今回は令和4酒造年度(4年7月~5年6月)に製造された818点が全国から出品され、5月24日、特に優秀と評価された218点が金賞に選ばれた。

都道府県別で金賞酒が最も多かったのは山形の20点。兵庫19点、長野16点、新潟15点と続き、昨年まで9連覇中だった福島は14点で5位だった。

記録が途絶えた福島県酒造組合の鈴木賢二特別顧問(61)は「10連覇したかった」と衝撃を隠せない。

「昨年の猛暑により想定以上に米が硬かった影響で、香りが低く味が軽くなってしまった」と分析し、「もう一度、日本一を奪還したい」と力を込めた。

山形の日本一は平成16年に単独で、26年に福島と同数で達成して以来、今回で3度目のことだった。

競争でなく協力

日本酒はかつて、焼酎ブームに押され消費低迷に直面した。日本酒の復権を期して、山形県天童市の「出羽桜酒造」は昭和55年、それまで鑑評会にしか出品していなかった「吟醸酒」を発売。技術を積み重ね、ふくよかな香りと淡麗な味わいで高い評価を得て、吟醸酒ブームに火をつけた。

だが、一社だけでは価格は下がらず市場は広がらない。県酒造組合の当時の仲野清次郎会長らが62年、蔵元へ働きかけ、相互に技術を研鑽し合う「山形県研醸会」を設立した。

同会は、それまであった若手経営者や現場技術者の情報交換の場を一段と高め、互いの技術を公開し合うことをモットーに「競争より協力」を掲げた。また、杜氏(とうじ)に頼るのではなく、自社従業員による酒造りを進めた。

仲野会長は当時、県工業技術センター職員で、現在は酒造組合の特別顧問を務める小関(こせき)敏彦さん(67)とも語らい、研鑽を積んだ。それは、産と官が一緒になった「オール山形」での日本酒再生という、全国でも数少ない試みだった。

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